【灘の昼ごはん369食目】冷やしイタリアンはじめました

「冷やし中華はじめました」盛夏の中華料理店の壁に貼られた張り紙が恨めしい。いや冷やし中華が恨めしいのではなく、添えられたキュウリが憎い。一かけでもキュウリが載っていると、そこからキュウリ臭が広まって全体をダメにしてしまう。これを「青臭ったキュウリの方程式」と呼んでいる。芸能界水泳大会に例えるとアイドルの中に混じった青空球児みたいなものだ。今日はアーケードからでるのも億劫になるくらい暑かったので、アーケード内でツルっと冷たい麺を探す。灘センター商店街のlargoのランチメニューに「海老とかぼちゃの冷製スープパスタ」というのがあったので注文する。「こ、これは!」。運ばれてきた皿を見て思わず声が漏れた。オレンジ色のカボチャの冷製スープの上によく冷えたカッペリーニ、トマトと海老の赤、オクラとアボカドの緑が映える。まるで皿の上で榊原郁恵とアグネスラムがはしゃいでいるような溢れんばかりの夏感。しかも、しかもだ、あの憎っくき青空球児、いやキュウリがいない。夏だからキュウリ入れとけとか、彩りはキュウリで、みたいな三流芸能プロダクションのような安直な発想はない。
是非「冷やしイタリアンはじめました」と壁に貼ってほしい。

largo「海老とかぼちゃの冷製スープパスタ」
●場所
神戸市灘区倉石通2丁目(灘センター商店街)
●本日の昼食
海老とかぼちゃの冷製スープパスタ、サラダ
800円(税別)


【灘の昼ごはん368食目】漬物茶屋たけちょう「市場弁当」

神戸市立森林植物園の真野響子名誉園長を摩耶山にご案内した。真野さんの本名は「まの」だが、NHKの名物Dだった和田勉氏が「まや」と命名したそうで摩耶山ともご縁があるそうだ。まずは是非お参りしたかったということで天上寺へ。マヤ山を歩くマヤさん。ややこしいな。チベットをトレッキングしたりと意外とアウトドアな方でスタスタと軽い足取りでマヤ遺跡を見ながら下山、坂バスで水道筋へ。街もスタスタと歩く。商店街より市場がお気に入りのご様子だったので、ランチは灘中央市場の「たけちょう」の市場弁当にする。市場の逸品をセレクトしたおかずを前にすると酒が欲しくなる。「遠慮なく飲んで。私飲まないけど」。カティーサークのCMの印象が強いが一滴も飲めないらしい。遠慮なくビールをいただく。きっぷのいいトークの合間にときおり少女の影がのぞく。帰りはJR摩耶駅までお送りした。マヤさんをマヤ山にご案内してマヤ駅までお送りするというマヤ三昧の1日の終わり、摩耶駅のコンコースには西方浄土からの光が満ち溢れていた。「じゃあね。今日はどうもありがとう」手を振る真野さんが摩耶夫人(まやぶにん)にみえた。

漬物茶屋たけちょう「市場弁当」
●場所
神戸市灘区水道筋3丁目(灘中央市場内)
●本日の昼食
市場弁当
鶏唐揚げ(鳥一)、冷奴バジルソース(佐藤豆腐店)、白菜の柚子ドレッシング(とうない総菜店)、煮物、ポテサラ、味噌汁、きゅうりの漬物、緋の蕪漬、ご飯
900円


【灘の昼ごはん367食目】cafe702「カレーライス」

諸説あるが土用の丑の日に鰻を食べる風習はうなぎ屋の販売促進コピーがきっかけらしい。さすがにここまで風物詩になるとは当時は予想できなかったとは思うけど、「土用の丑の日は鰻」という販促コピーが鰻を絶滅危惧種に追い込むんだから恐ろしい。とにかく日本人はこの手のコピーに弱い。いや弱すぎる。「夏はカレー」だってそうだ。ハウスのCMで西城秀樹が「夏はカレー!」と言えばルーの売り上げが上がった。いや、ヒデキじゃなくてマッチか。その後キャンディーズの「おせちもいいけどカレーもね」とか、カレールー業界のキャッチコピーのなんでもあり感は最強だ。そのうち「加計もいいけどカレーもね」とかいい始めるんじゃないか。土用の丑の日の翌日、摩耶山はエアコン入れてるんじゃないかと思えるくらい爽やかで涼しい。暑苦しい街を見下ろし、ヒグラシの声を聞きながらのランチタイム。10種類のスパイスとココナッツミルクがとろーり溶けてるcafe702特製チキンカレーは650円とは思えないヒデキカンゲキなクオリティ。やっぱり夏は摩耶山でカレーなのだ。

cafe702「カレーライス」
●場所
神戸市灘区摩耶山町(摩耶ロープウェー星の駅2階)
●本日の昼食
カレーライス
650円


【灘の昼ごはん366食目】あらたや「海爆弾」

「共謀罪」法が施行された。今後、東神戸マラソン(主催:ナダタマ)が「反神戸マラソンを掲げる危険分子のデモ行為」ということで監視の対象に入ったり、六甲縦走キャノンボールが「過激集団による六甲山山岳ゲリラ育成プログラム」などと因縁をつけられる可能性だって十分ある。そして灘区のリーサルウェポン「海爆弾・山爆弾」を「爆弾、海山各10個ずつ例の場所によろしく」とLINEで発注しただけでパクられるかもしれない。恐ろしい世の中になった。この日は摩耶山下山部だった。摩耶山から男女23名が爆弾(海爆弾と山爆弾)をリュックに忍ばせて桜谷を下った。ここだけ読むと連合赤軍の山岳訓練みたいだ。まずい。徳川道との合流点、摩耶山屈指の昼ごはんスポット桜谷出合で昼飯。海爆弾は別名「携帯幕の内弁当」と言われる通り、おむすびの中に塩サバ、海老の唐揚げ、竹輪甘辛煮、昆布佃煮など海の幸がゴロゴロ詰まっていてなかなかの破壊力。それにしても山の中は安心だ。監視カメラのない山の中では爆弾をパクついてもパクられることはない。

あらたや「海爆弾」
※毎月第三土曜日に摩耶ロープウェー虹の駅構内の「虹の茶屋」にて限定発売
●場所
神戸市灘区篠原南町7丁目(東畑原市場)
●本日の昼食
海爆弾(塩サバ、海老の唐揚げ、竹輪甘辛煮、昆布佃煮)
400円


【灘の昼ごはん365食目】largo「海老とバジルとチェダーチーズの生麺パスタ」

灘区に大きな被害をもたらした昭和13年の阪神大水害は7月5日、昭和42年豪雨は7月9日、いずれも台風に刺激された梅雨前線による集中豪雨によりもたらされた。灘クミンにとって前線と台風の組み合わせはトラウマなのだ。昭和42年豪雨では摩耶山のいたるところで土石流が発生し、大量の土砂が街を飲み込んだ。山が近いとはそういうことだ。普段はおだやかな六甲山だっていつ牙を剥くかわからない。もちろん山が近くていいこともたくさんある。山を降りればすぐ街があるという環境は神戸に住むことの大きなアドバンテージだと思う。山と街をつなぐ坂バス「水道筋商店街北」バス停からほど近い灘センター商店街の隠れ家系イタリアン「Largo」は山帰りに寄りたい店の一つ。和食器に盛り付けられたもちもちっとした太めの生麺に海老とチェダーチーズのソースが濃厚に絡み、休日の下山後とかにワインと合わせるとドンピシャだよなーなどと思いつつ、今日はぐっと我慢。店の前にはハイカーのためのリュックを固定する(らしい)フックまであるという山帰り仕様もうれしい。店を出ると商店街のアーケードにトリミングされた新緑の摩耶山が間近に見える。明日は登って下りて飲んで食うぜ!

largo「海老とバジルとチェダーチーズの生麺パスタ」
●場所
神戸市灘区倉石通2丁目(灘センター商店街)
●本日の昼食
海老とバジルとチェダーチーズの生麺パスタ、サラダ
800円(税別)


【灘の昼ごはん364食目】シバサクティ「カレーうどん」

インドルーツのカレーと日本のうどんが合体したカレーうどんは誕生当初はキワモノ扱いだったと思う、おそらく紆余曲折の歴史を辿ってきて「日本の味」として定着したのだろう。そんなカレーうどんの歴史を真っ向から否定するカレーうどんが灘にある。そもそも通常うどん店のメニューであるカレーうどんが、インド料理店で供されるのだ。まずうどんが皿に盛り付けられているというビジュアルにハッとさせれらる。皿うどんではなく皿カレーうどん。そして緑色がかったルー(ほうれんそうとチキン)の半端ないなんじゃこれ感。本当にこのビジュアルでいいのかという若干の疑問を感じつつ一口食べると爽やかなデカン高原の風が体の中を抜ける。インド文化が日本文化と融合してさらにインド化されるという前方伸身宙返り3回ひねり的なカレーうどんだった。案外神戸らしいメニューかもしれない。

シバサクティ「カレーうどん」
●場所
神戸市灘区水道筋6丁目
●本日の昼食
カレーうどん(ほうれん草とチキンのカレー)
700円


【灘の昼ごはん363食目】晃龍「炒飯」

神戸はウスターソース発祥の地だそうだ。今でも神戸市内には小さなソース蔵(というのか?)があり独自の地ソース文化を形成している。思い起こせばウスターソースは醤油と並ぶ食卓の必需品だった。カレーに天ぷら、エビフライ、そして豚まんにもソースを合わせるのが神戸流だった(と勝手に思ってる)。中華でも容赦しない、炒飯にだってウスターをかけた。久しぶりに「ウスターをかけた炒飯」を食べたくなった。といっても最近の味の濃い炒飯にウスターをかけるとくどくなってしまう。その点、畑原市場の中華惣菜「晃龍」の炒飯はウスターがよく合う。最初はそのままあっさり食べる。そして後半にウスターをひとかけした瞬間、中華と洋食が渾然一体となった神戸のソウルフードに変貌するのだ。

晃龍「炒飯」
●場所
神戸市灘区倉石通1丁目(畑原市場)
●本日の昼食
炒飯(ウスター味)
300円


【灘の昼ごはん362食目】蒸し料理ひのき「蒸し豚もやし定食」

小学生の頃、近所にモヤシを作っている家があった。家庭菜園レベルではなく大量に作っていたいわばもやし農家だ。周辺は六甲山の伏流水が湧く場所で豆腐屋などもあり、湧き水を利用した小さな産業だったのであろう。おそらく井戸に豆を浸して栽培していたのだと思う。路地の奥のアジトのような民家でひっそりとモヤシを作っていることが不思議で、一度その製造工程を見てみたかったが震災で跡形も無くなってしまった。せいろで蒸されたジューシーな厚切りの豚バラの下に隠れているモヤシを見てふとそんなことを思い出した。

蒸し料理ひのき「蒸し豚もやし定食」
●場所
神戸市灘区水道筋6丁目
●本日の昼食
蒸し豚もやし、ご飯、汁物、香の物
680円


【灘の昼ごはん361食目】Logic「昔カレー」

今から100年前、日本初の山茶屋カレーを供した「登六庵」の1913年レシピが「昔(いにしえ)カレー」として限定復活。鶏ミンチとジャガイモがごろり。茶店近くでとれた山菜も入れたそうでヤマ飯感が盛り上がる。売り切れ御免。

Logic「昔カレー」
●場所
神戸市灘区水道筋1丁目
●本日の昼食
昔カレー、玉子、サラダ、コーヒー
900円


【灘の昼ごはん360食目】チキンバターマサラ「Bセット」

昼160106

灘区を地層的に見ると高尾通〜国玉通あたりに、まるでカレールーに浮いたギーの様にうっすらと「インド層」がある。かつて摩耶山から流れ出す聖水「マーヤヤーマ」が山麓で湧き出し、そこにインド人が居住し、灘区〜旧葺合区独特の「高所性インド集落」を形成していった。やがて彼らはトーガガワ流域を南下、シノーハラ公園でしばしばネイティブナダクミンとグランドの取り合いで衝突した(俗に言う印ナ紛争)。ターバンを巻いた彼らは攻撃的なナダクミンに反撃せず「お母ちゃんに言うたるからな〜」という予想外の言葉を繰り返しながら非暴力抵抗を貫いた。「灘山の手インド層」に昨年末新しい店がオープンした。メニュー名そのまま店名にしてしまったようなストレートさが意表をつく「チキンバターマサラ」のドアを開けた。同じくインド層にあったパンチの効いたカレーとインド人マスターが印象的な伝説の店「Desi Chai」に通じるモダンインド感がうれしい(そう、いかにもインド感苦手なんです)。ランチメニューの中から店名と同じチキンバターマサラのセットを注文すると、ターバンではなくベースボールキャップを被った若い店長が大きなナンと鮮やかなオレンジ色のカレーを運んできた。一口食べると印ナ紛争の切ない思い出が脳裏をよぎった。戦い途中で靴ひもがほどけたインド人少年兵のちょっと傾いたターバンと「もー!靴ひもほどけたやん」の叫びを!

チキンバターマサラ「Bセット」
●場所
神戸市灘区国玉通2-1-12-101(坂バス国玉通2バス停東)
●本日の昼食
チキンバターマサラ、ナン、サラダ
880円