【その街のおとな02】西灘デルタ

NHKドラマ「その街のこども」で森山未來とサトエリが潜り抜けたガードがある阪神西灘駅の北側に「西灘デルタ」というエリアがある。震災前はこの三角形の街区に小さな商店が集まっていた。一番駅寄りの三角形の鋭角部分にあった居酒屋「百万両」はその極小さゆえに中がどうなってるのかさっぱり想像がつかなかった。国道2号沿いには狭い店内に生鮮品からお菓子などがみっしりと陳列され、まるで宇宙ステーションの船内のような「正直屋」、摩耶埠頭に上陸したソ連の船員が散髪に来る理容「コロナ」、そして一軒居酒屋を挟んで中華「豚珍漢」。ここで木曜日の塾の帰りにザ・ベストテンの沢田研二を見ながら食べたレバニラ炒めを超えるレバニラ炒めに未だ出会ったことがない。
なんといっても西灘デルタで小学生の頃の僕が夢中になったのはカップヌードルの自動販売機だ。ボタンを押すとカップヌードルがストンと落ちてきて、門松の竹みたいに先が斜めに切り落とされた鉄のパイプが蓋にブスッと突き刺さって給湯されるという一連のシークエンスに釘付けになった。自販機に内蔵されていたフォークで食べるワクワク感も相当だった。しかし小学生にはカップヌードルは高くて買えない。僕は自販機の前でひたすらカップヌードルを買う大人を待ったが誰も買わなかった。いつのまにか自販機はデルタ地帯から消えていた。
震災後、西灘駅は新しい駅になり昔の面影はない。西灘デルタの店々もなくなった。でもこの道を通るたびにカップヌードルが食べたくなるのは今でも変わらない。


【その街のおとな01】カーテンカーペットの蝶屋

震災後に変わった風景を巡る「その街のおとな」1.17までの短期企画です

よく晴れた冬の日曜日。
まだ眠い頭に響くにぶいプロペラ音とともに一機のセスナが飛来して灘上空を旋回しはじめる。と、その刹那、ピッチが不規則に揺れる女性の声。いまはほとんど遭遇することもなくなったセスナ広告だ。

「センターセンター互助センター・・
  冠婚葬祭互助センター・・
   結婚式は玉姫殿・・・」

ドップラー効果で最後の「玉姫殿」はオッさんの声に変わるのも不気味だった。今でも青い空を見上げるとあの不思議なアナウンス(いや、プロパガンダと言ったほうがいい)を思い出す。万人に等しく降り注ぐ天の声は日曜の平和な空に実によく似合う。今ならすぐに通報されるかもしれない。このころはまだ街にのんびりとした許容力があったのかもしれない。

「灘・・・水道筋1丁目・・
  カーテンカーペットの店・・蝶屋・・・
    オーダーカーテン全品2割引・・・大好評~」

カーペットの広告を空から行うという大胆な店「蝶屋」は水道筋1丁目にあった。
灘フォント界で蝶屋バタフライ体と呼ばれる明らかに異界感が漂う印象的なロゴは、震災後しばらくして店名が変わり、どこにでもあるようなパソコンフォントに変わってしまった。そして、ユーミンの『コバルトアワー』のイントロとビートルズの『Lucy in thesky with Diamnds』を同時に聞いてしまったようなトリップ感のあるプロパガンダセスナももう聞こえてこない。


【灘の細道21】王子グリーントンネル

王子公園の北西に「王子わんぱく遊園」という小さな公園がある。震災前に「仮面ライダー神戸版」のロケが行われたといえばピンと来る灘クミンがいるかもしれない。公園自体は何の変哲もないが、この公園から東に抜ける細い道がいい。通称「王子グリーントンネル」と呼ばれている(いや、呼んでるのはきっと僕だけに違いない)癒しの道だ。特に今年のような暑い夏はここを歩きたくなる。ほんの数秒で歩ける道だけど是非ゆっくり味わいながら歩きたい。天気のいい日は天井からシャラシャラと木漏れ日が射す。葉っぱに反射した緑の光が体を包み、まるでウクライナの「恋のトンネル」を歩いているような気分になる。行ったことないけど。王子弓道場側に目をやる。タイミングが合えば葉っぱの間から清楚な弓道着に身を包んだ凛々しい弓道女子を見ることもできる。女子が着る道着で一番キュートは弓道技でないか?そんなことをぼんやりと考えながら歩くともう出口だ。ああ、もう終わりなのか。来し道を振り返っても誰もいない。幸福は一瞬だ。それは人生に似ている。
しかし、地下道、ガード下、地下河川、市場、商店街、僕の好きな空間はほとんどがトンネル状の空間なのはなぜだろう。理由はわからない。王子グリーントンネルを振り返りながら松鶴家千とせ風に呟いてみた。「きっと前世がトンネルだったのだろう」と。


第14期灘大学募集

灘のまちを知り、楽しく学ぶ講座「第13期灘大学」が開講します。灘大学は街がキャンパスです。様々なジャンル、視点から灘のまちを再発見する講座やガイドウォークを通して、今まで知らなかった灘と出会ってください。

≪第1回≫灘珈琲学~灘街と山 萩原珈琲90年の軌跡
今年創業90周年を迎えた萩原珈琲のコーヒートーク
日時:10月6日(土曜)10時~12時
会場:原田資料館

≪第2回≫灘土木学~鶴甲まちびらき50年
鶴甲まち開き50周年記念講演会
日時:11月23日(金祝)15時~17時(予定)
会場:鶴甲会館

 

 

 

 

≪第3回≫灘アーカイブス~阪神大水害80年
昭和13年の阪神大水害の写真を見ながら当時を振り返るフォトセッション
日時:12月8日(土曜)10時~12時(予定)
会場:未定

 

 

 

 

 

≪第4回≫灘建築学~近代郊外住宅地としての灘山麓 
笠原一人さん(京都工芸繊維大学助教)による灘住宅史
日時:1月19日(土曜)10時~12時(予定)
会場:神戸高校同窓会館

 

 

 

 

 

 

≪第5回≫灘秘宝館~原坂コレクション
原坂一郎さん(怪獣ミュージアム)の怪獣コレクション
日時:2月9日(土曜)10時~12時(予定)
会場:稗田地域福祉センター

 

 

 

 

 

≪第6回≫灘交通学~坂バス5周年トーク&ツアー ※全6講座申込者限定
坂バスが本格運行するまでの秘話とバスツアー
日時:3月2日(土曜)10時~12時(予定)
集合場所:未定

 

 

 

 

 

●受講料
全6講座 「灘百選の会」会員 1,500円 非会員 3,000円
※受講料は第一回目の会場にてお支払いください
※受講料の払い戻しはできません

●申込方法
下記の必要事項を記入の上、FAXかE-mail、はがきでお申込みください。
受講料は一回目の講座の会場でお支払い下さい。
1.住所
2.参加人数(グループ申込は2名まで)
3.参加者氏名
4.電話番号
5.「灘百選の会」会員・非会員
6.参加したい回
(申込時は「灘大学入学希望」と明記してください)
※ご記入いただいた個人情報につきましては、本講座以外での使用は一切いたしません。
※第6回は灘大学生限定講座となります。受講希望の方は平成30年12月末までに入学手続きをおすませください。

・メールで
住所、氏名、電話番号、灘百選の会の会員・非会員を記入の上件名に
「灘大学入学希望」と明記し下記までお申し込みください。
nadaku@office.city.kobe.lg.jp
・区役所で
灘区役所4F「灘百選の会」事務局(まちづくり課内)にある
申込書に必要事項を記入のうえお申し込みください。


●主催・申し込み

〒657-8570(住所不要)
灘区役所まちづくり課内「灘百選の会」事務局
Tel: 078-843-7001 (内線223)
Fax: 078-843-7034
Email: nadaku@office.city.kobe.lg.jp


【灘の昼ごはん379食目】混ぜるは恥だが味が立つ

あなたはカレーライスを食べる時、全部混ぜる派だろうか。それとも混ぜない派だろうか。僕は混ぜない派です。白いご飯部分がなくなっていくのはそこはかとなく切ない。でもその切なさがカレーライスを食べる時の楽しみの一つでもある。でもピビンパだけは別だ。これでもかというくらいに具と飯を混ぜたほうが圧倒的に味が立ってくる。じゃあ最初から混ぜて出せばいいかというとそれは違う。美しく盛られた具材をスッカラ(スプーン)でカチャカチャ混ぜ混ぜするというちょっと行儀が悪いような背徳感が楽しい。韓国食材の店がなくなって久しい水道筋に待望の韓国ダイニングが骨董通りのシェアキッチンにオープンした。店長は三宮のJinanで腕を磨いた灘クミン。CASS(韓国ビール)やマッコリ、ソジュ(焼酎)もあるので、日曜の昼下がりにオモニ直伝の自慢のチヂミやキンパ、チャプチェ、キムチをつまみながらの昼酒もオツ。テイクアウトも可能。日曜と月曜だけの営業なのでご注意。
そういえばこの場所でピビンパを混ぜ混ぜしていてふと思い出した。このシェアキッチンのメンバーだった「カラピンチャ」のスリランカカレーも同じように混ぜ混ぜしたことを。

韓バルジョンヒ「ピビンパランチ」

●場所
神戸市灘区篠原南町7丁目1−8(水道筋骨董通り)

 ※日曜、月曜(夕方まで)のみ営業
●本日の昼ごはん

・ピビンパ

・チヂミ
・チャプチェ
・スープ

800円


【今日は灘の日】7月5日

1938年(昭和13)7月5日 阪神大水害発生。台風に刺激された梅雨前線は7月3日から5日にかけて神戸市に集中豪雨をもたらした。灘区内の被害は死傷者314名、り災家屋約10000戸

大石川の大氾濫

青谷付近の濁水


【灘の昼ごはん378食目】フツーでハッピーがいい

泉一貫楼が70余年の歴史を閉じた。一貫楼ロスで心にぽっかりと穴が空いた。
どれくらいの穴かというと、クラスのそんなに可愛くもなく目立たないフツーの女の子が転校してしまった感覚に近い。いつも見えてたはずの彼女の何気ない笑顔だったり、ふと見せるもの悲しげな表情、決して彼女のことを好きなわけではない。ただそういう日常がなくなる喪失感はボディブローのように効いてくる。灘郵便局の帰り道「大石一貫楼」の暖簾をくぐる。大阪万博の年に開店したというからかれこれ半世紀。灘区内に5軒ほどあった一貫楼もついにここだけになってしまった。僕にとってラーメンは特別なものではない。なので並んで食べたりわざわざ遠くまで行ったりする気はない。自分の住んでいるフツーの街にフツーのラーメン、いや中華そばがあるということだけでハッピーな気持ちになれる。細目の麺、細目のもやしに薄めの焼き豚、鶏ガラだしと炊き醤油を合わせたスープという絶妙のフツーなバランス。素材がどうののこだわりがどうのというおどしも媚もない、店構えも接客も声高に叫ぶことなくただただフツーで丁寧。そんなフツーの中華そばがある街に住めることに感謝したい。

大石一貫楼「Aセット」
●場所
神戸市灘区鹿ノ下通2-3-10
●本日の昼ごはん
・ラーメン
・炒飯(小)
700円


【灘の細道20】灘南波乗りロード



JR摩耶駅ができて早2年。駅周辺ではマンション工事が進む。
東灘貨物駅があったころにくらべてすっかり変わってしまったね、なんて言ってしまうのは簡単だ。
しかし変わってないもの、いや変えられないものがある。それは地形だ。
JR摩耶駅周辺は南北の高低差だけではなく河川による東西の高低差、それに鉄道敷地が複雑に絡み合い「ブラタモリ」のロケが来てもおかしくない地形マニアにとってはたまらないエリアなのだ。戦後に作られた駅の南を東西に走る道は地元ではダンプ道と呼ばれていた。道幅が広く車の往来が少ないのでスピードが出しやすい。その上アップダウンが激しく接近するダンプカーがまるで波乗りをしているかのように沈み込んでから急に現れるという危険な道だった。昭和50年代、道路で遊ぶ子どもたちを交通事故から守るためにダンプ道沿いの日米珈琲本社の東隣には「ちびっこ広場」という小さな空き地もつくられた。
天気が良かったので勝手に「波乗りロード」と名付けてみた。この道は山下達郎が似合う。「BIG WAVE」を聴きながら都賀川から「タカバシサンセット坂」に向けて車を走らせれば夏はすぐそこだ。