【灘の昼ごはん379食目】混ぜるは恥だが味が立つ

あなたはカレーライスを食べる時、全部混ぜる派だろうか。それとも混ぜない派だろうか。僕は混ぜない派です。白いご飯部分がなくなっていくのはそこはかとなく切ない。でもその切なさがカレーライスを食べる時の楽しみの一つでもある。でもピビンパだけは別だ。これでもかというくらいに具と飯を混ぜたほうが圧倒的に味が立ってくる。じゃあ最初から混ぜて出せばいいかというとそれは違う。美しく盛られた具材をスッカラ(スプーン)でカチャカチャ混ぜ混ぜするというちょっと行儀が悪いような背徳感が楽しい。韓国食材の店がなくなって久しい水道筋に待望の韓国ダイニングが骨董通りのシェアキッチンにオープンした。店長は三宮のJinanで腕を磨いた灘クミン。CASS(韓国ビール)やマッコリ、ソジュ(焼酎)もあるので、日曜の昼下がりにオモニ直伝の自慢のチヂミやキンパ、チャプチェ、キムチをつまみながらの昼酒もオツ。テイクアウトも可能。日曜と月曜だけの営業なのでご注意。
そういえばこの場所でピビンパを混ぜ混ぜしていてふと思い出した。このシェアキッチンのメンバーだった「カラピンチャ」のスリランカカレーも同じように混ぜ混ぜしたことを。

韓バルジョンヒ「ピビンパランチ」

●場所
神戸市灘区篠原南町7丁目1−8(水道筋骨董通り)

 ※日曜、月曜(夕方まで)のみ営業
●本日の昼ごはん

・ピビンパ

・チヂミ
・チャプチェ
・スープ

800円


【今日は灘の日】7月5日

1938年(昭和13)7月5日 阪神大水害発生。台風に刺激された梅雨前線は7月3日から5日にかけて神戸市に集中豪雨をもたらした。灘区内の被害は死傷者314名、り災家屋約10000戸

大石川の大氾濫

青谷付近の濁水


【灘の昼ごはん378食目】フツーでハッピーがいい

泉一貫楼が70余年の歴史を閉じた。一貫楼ロスで心にぽっかりと穴が空いた。
どれくらいの穴かというと、クラスのそんなに可愛くもなく目立たないフツーの女の子が転校してしまった感覚に近い。いつも見えてたはずの彼女の何気ない笑顔だったり、ふと見せるもの悲しげな表情、決して彼女のことを好きなわけではない。ただそういう日常がなくなる喪失感はボディブローのように効いてくる。灘郵便局の帰り道「大石一貫楼」の暖簾をくぐる。大阪万博の年に開店したというからかれこれ半世紀。灘区内に5軒ほどあった一貫楼もついにここだけになってしまった。僕にとってラーメンは特別なものではない。なので並んで食べたりわざわざ遠くまで行ったりする気はない。自分の住んでいるフツーの街にフツーのラーメン、いや中華そばがあるということだけでハッピーな気持ちになれる。細目の麺、細目のもやしに薄めの焼き豚、鶏ガラだしと炊き醤油を合わせたスープという絶妙のフツーなバランス。素材がどうののこだわりがどうのというおどしも媚もない、店構えも接客も声高に叫ぶことなくただただフツーで丁寧。そんなフツーの中華そばがある街に住めることに感謝したい。

大石一貫楼「Aセット」
●場所
神戸市灘区鹿ノ下通2-3-10
●本日の昼ごはん
・ラーメン
・炒飯(小)
700円


【灘の細道20】灘南波乗りロード



JR摩耶駅ができて早2年。駅周辺ではマンション工事が進む。
東灘貨物駅があったころにくらべてすっかり変わってしまったね、なんて言ってしまうのは簡単だ。
しかし変わってないもの、いや変えられないものがある。それは地形だ。
JR摩耶駅周辺は南北の高低差だけではなく河川による東西の高低差、それに鉄道敷地が複雑に絡み合い「ブラタモリ」のロケが来てもおかしくない地形マニアにとってはたまらないエリアなのだ。戦後に作られた駅の南を東西に走る道は地元ではダンプ道と呼ばれていた。道幅が広く車の往来が少ないのでスピードが出しやすい。その上アップダウンが激しく接近するダンプカーがまるで波乗りをしているかのように沈み込んでから急に現れるという危険な道だった。昭和50年代、道路で遊ぶ子どもたちを交通事故から守るためにダンプ道沿いの日米珈琲本社の東隣には「ちびっこ広場」という小さな空き地もつくられた。
天気が良かったので勝手に「波乗りロード」と名付けてみた。この道は山下達郎が似合う。「BIG WAVE」を聴きながら都賀川から「タカバシサンセット坂」に向けて車を走らせれば夏はすぐそこだ。


【灘の朝ごはん5食目】喫茶ドニエ

今日は2018年6月6日、水曜日。水道筋のコーヒーショップ「ドニエ」。昨日の夜からあきれるくらい雨が降っている。今のところ晴れという概念の暗示すらない。
「ねえ。畑原市場のアーケード、なくなっちゃうのかしら?」と彼女は僕に訊ねた。
「黄身次第だね。」まずは少しはぐらかして白身から食べるのがベターだ。
「それはそうと。」僕は香ばしく焼かれたーそれは黄身にとってはどうでもいいことかもしれないートーストの耳を少しちぎるとパン屑が床に落ちた。
「やれやれ」と心の中で呟く。
「これは参考意見として聞いて欲しいんだけど。」
僕は丁寧に焙煎されたUCCドニエブレンドのサイフォンコーヒーを一口飲んでから言った。
「黄身は半熟でないといけない。」
「そんなことより。」
彼女は面倒臭そうにロースハムーそれは伊藤ハムではないかもしれないーを脇にやりながら言った。
「私のことどう思ってる?」
その言葉が彼女の口から出たときにはもうすべてが終わっている。
僕はトーストの耳で半熟の黄身をすくって食べると「それは、黄身が決めて欲しい。」と言って席を立ち、勘定を払いーそれは480円だったかもしれないーラヴィン・スプーンフルの『水道筋汗かきえびす音頭』を口ずさみながら店を出た。

「人間の後半生は、通常、前半生で蓄積された習慣のみで成り立つ」
(フョードル・ドストエフスキー)

僕はドニエで半熟の黄身をトーストですくって食べ続ける。それは素敵なことだ。
誰がなんといおうと。

●場所
神戸市灘区水道筋5丁目3−3
●本日の朝食
スナックモーニング
・ホットコーヒー・トースト・ハムエッグ
480円


【灘の昼ごはん377食目】パンダをしばきに原田まで

 

喫茶店に行くことを「茶しばく」というが、灘区ではパンダを見に行くことを「パンダしばく」と言う(略してパンしば)。それだけ街とパンダが近いということだ。灘区は動物園を普段使いすることができる獣住近接の街だ。「時間空いたからちょっとパンダしばこか?」なんて気負うことなくゲタ履きでパンダに会いに行ける街なんてそうない。パンダといえば上野動物園と白浜アドベンチャーワールなわけで、誰も神戸の灘にパンダがいることなんて知らない。王子動物園?どこそれってなもんである。ポートピア81から数えると40年近いパンダ歴があるにもかかわらず、だ。でもそれがいい。できることならパンダがいることも隠しておいて欲しいくらいだ。平日の昼間、閑散とした園内でダラダラしている旦旦を見ると「お前、灘で良かったよな」と声をかけたくなる。すっかり初夏の陽気の土曜日、区界のミュージアムカフェでカレーをしばいた。店名の「ぱんだかふぇ」というフワフワした語感の斜め上をいく横尾忠則デザインのドクロ皿というカオス感が灘的だ。大きなガラス窓から道路の向こう側に目をやると賑わう王子動物園。観光客に見つめられてちょっと困った顔をしている旦旦が目に浮かんだ。

ぱんだかふぇ「
ぱんだらんち」
●場所
神戸市灘区原田通3-8-30  横尾忠則現代美術館 1F
●本日の昼ごはん
・グリル野菜のカレー
・サラダ
・コーヒー
1080円


【灘の昼ごはん376食目】晴れときどきハンバーガー

昔三宮にあった「コスモポリタン」の奥にあったレストランのメニューに「コスモバーガー」というのがあった。パンとハンバーグが別々に出てきて自分でセットするスタイル(だったと思う)で赤いプラスチック製の爪楊枝に刺さったピクルスが添えられていた。とにかくオシャレ感と美味さが衝撃的だったのでこれが毎日食べられたら死んでもいいと子供心に思った。そんな私の心を見抜いたオカンが天気のいい日曜日に時々ハンバーガーを作ってくれた。いや、正確にはハンバーガーではなかった。当時は丸いパン(バンズっていうの?)なんか売ってなかったので、食パンにハンバーガーを挟んだハンバーグサンドだ。ミンチは灘中央市場の老舗、土居精肉店の合挽き、そして赤い爪楊枝にささったピクルスが添えられていた。当時ピクルスなんて元町の明治屋か神戸グローサリーズにしか売ってなかったんじゃないか?わざわざ買いに行ってたのだろうか。あれから40年以上経った。オカンとコスモポリタンはなくなったが土居精肉店は健在だ。5代目が土曜日と日曜日にときどきハンバーガーを始めるようになった。派手な演出も嘘くさい香辛料も一切ないシンプルな精肉店ならではの「ザ・ハンバーガー」を頬張る。五月晴れの王子動物園で食べたオカンのハンバーグサンドを思い出した。

土居精肉店「ミニバーガー、ベーコンチーズバーガー」
●場所
神戸市灘区水道筋3丁目5(灘中央市場)
●本日の昼ごはん
ミニバーガー 330円
ベーコンチーズバーガー 750円


【灘の朝ごはん4食目】ロイヤルホスト西灘店

阪急王子公園駅という呼び方がしっくりこない。いや、水道筋の最寄駅が王子公園というのがしっくりこないと言った方がいいかもしれない。水道筋のデコンストラクションな風情と公園という整ったイメージが合わない。これはもう「ちぎれた愛」の西城秀樹が能天気な「YMCA」を歌うくらい違和感がある。こんなのヒデキじゃないと子供心に思った。やはり水道筋の最寄駅は「西灘」であって欲しい。「ロイヤルホスト西灘店」はまだ阪急西灘駅だったころ開業した。かれこれ40年ほどの歴史がある灘区ファミレス界の老舗だ。どんどんと王子公園化される界隈で今でも「西灘」を名乗るという心意気が嬉しい。窓際の席に陣取る。ロイヤルホスト自慢の大きい窓から、朝日に輝く山手幹線を眺めながらホットコーヒーをすするのが西灘の朝に似つかわしい。今日はブルースカイが広がっていた。このあたりは神大闘争で武装した学生と機動隊が対峙した場所だ。振り向けばあの時の目にしみる空の青さ思う。

●場所
神戸市灘区城内通1丁目6−22
●本日の朝食
トースト&サラダモーニング
ホットコーヒー、トースト、サラダ
475円