灘区を地層的に見ると高尾通〜国玉通あたりに、まるでカレールーに浮いたギーの様にうっすらと「インド層」がある。かつて摩耶山から流れ出す聖水「マーヤヤーマ」が山麓で湧き出し、そこにインド人が居住し、灘区〜旧葺合区独特の「高所性インド集落」を形成していった。やがて彼らはトーガガワ流域を南下、シノーハラ公園でしばしばネイティブナダクミンとグランドの取り合いで衝突した(俗に言う印ナ紛争)。ターバンを巻いた彼らは攻撃的なナダクミンに反撃せず「お母ちゃんに言うたるからな〜」という予想外の言葉を繰り返しながら非暴力抵抗を貫いた。「灘山の手インド層」に昨年末新しい店がオープンした。メニュー名そのまま店名にしてしまったようなストレートさが意表をつく「チキンバターマサラ」のドアを開けた。同じくインド層にあったパンチの効いたカレーとインド人マスターが印象的な伝説の店「Desi Chai」に通じるモダンインド感がうれしい(そう、いかにもインド感苦手なんです)。ランチメニューの中から店名と同じチキンバターマサラのセットを注文すると、ターバンではなくベースボールキャップを被った若い店長が大きなナンと鮮やかなオレンジ色のカレーを運んできた。一口食べると印ナ紛争の切ない思い出が脳裏をよぎった。戦い途中で靴ひもがほどけたインド人少年兵のちょっと傾いたターバンと「もー!靴ひもほどけたやん」の叫びを!
チキンバターマサラ「Bセット」
●場所
神戸市灘区国玉通2-1-12-101(坂バス国玉通2バス停東)
●本日の昼食
チキンバターマサラ、ナン、サラダ
880円